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バイト帰りに出会った女子高生との数年間の話【長文】
最終日の試験を切り抜け俺はジャムさんの好意で結構無理やりに空けてもらったシフトの分の穴埋めのバイトをこなしてから明かりがついている家に帰ってきた。
「ただいまー!!!疲れたー!」
「おー、お帰りー。」
「あ、お兄さん!」
「・・・んん?」
何故俺の部屋から二人分の声が聞こえる?
いや、白石には「うちの郵便受けに鍵入れておくから勝手に上がってていいぞ。」とは言ってある。
「何でお前がいるんだだてぇえええぇ!!」
「ん?白石ちゃんにあげてもらった。」
白石を見る。
「だってお兄さんに用事あるのに外に立たせてるの悪いでしょ?外寒いのに。」
その通りだ。
白石が正しい。
正しいが白石と二人だけの伊達が何を言い出すか分かったものではない。
「まあいいや。俺の用事はもう済んだから。」
「あ、おい!」
玄関の方に既に達し、靴を履き始める伊達。
「お!そうだ!これ、俺らからの選別。」
「あ、おいって!」
引き留めるのも聞かずに伊達は俺に何かを渡して出ていった。
「大体何を・・・」
薬局の紙袋に入った四角い感触が確認できるそれ。
確実にゴムだ。
茶を淹れなおしてカレンダーを眺めて呟く。
正直なかなか長かった。
何日かに一度ぐらいかはメールしたりしていたがそれ以外の連絡はほとんどしていなかった。
余裕がなかったというのも事実としてあるがこういったときに白石が拘束しない彼女でいてくれて良かったなぁと思っていた。
「そういや白石、どっか行きたいところとかないのか?ここ何週間かかまってやれてないからな。」
「んー?そうだなー・・・とりあえず」
「とりあえず?」
「いちゃつきたい、かな?ww」
「・・・」
言葉を失う。
この時ばかりは本当に何も言えなかった覚えがある。
いや、したいかしたくないかと言えばしたいのが本音ではあるが。
「一応さ、付き合ってる、訳だし・・・その、お正月ぐらいしか、そういうことしてないし・・・」
少し恥ずかしそうに「付き合う」という単語をいう白石を見て純粋に、ただ純粋に愛でたい衝動に駆られる。
>>182
ありがとう。
長々とごめんな。
もう中盤辺りまで来てるから最後まで見てくれると嬉しい。
「こんなに密着するとさ、心臓の音、聞こえるねwwお兄さんの凄い早いの分かるよ。」
「白石は、そうでもないな・・・」
「そうかな?緊張、してるんだけどな・・・」
「そうは見えないな・・・」
「じゃあ試そうか?」
「試すって・・・ッ!!」
唇が押し付けられる。
常々思っていたがこいつ欲求不満なんだろうか?
そんなことを脳裏に浮かべ白石の唇の感触を確かめていた。
「しょうがないなぁww」
先程の言葉とは裏腹に白石が苦笑するなかその背後に回る。
「ん・・・落ち着く・・」
白石の肩越しに手をまわして自分の脚の間に白石が入るだけのスペースを作る。
「お兄さん、その、もしかしたら、私、少し汗臭いかも…」
「いや、そんなことないよ?スゲーいい匂い。」
「嗅がないでよ!変態っぽいよ!?」
「男なんてみんなこんなもんだよww」
そういって白石の髪に顔を埋める。
「・・・なんだかんだ言ってお兄さんてさ、甘えん坊だよねww」
「・・・否定しない。」
「うわ!ちょ!くすぐったいってww」
何だこれ、幸せすぎる。
俺の人生か本当に?
「それはさておき、さっきの話だがバイト代幾らかあるし、本当にどっか行きたいとかないのか?」
「お兄さんと居れるならね、どこでも・・・いいよ?」
声がいつもより近く感じて、白石が向き直って俺の方を見てきた。
数日経ったある日の事だった。
何気ない一言だったと思う。
いつものようにこたつに入って勉強したりしていた白石が休憩をはさんだ時に話を振った。
別段何か意図したわけでも、ましてその方向に話を持っていきたいわけでも無かった。
単純に話のタネとして興味があったのだ。
時期的に言えば二月の中旬。
白石の通う高校が進学校を謳うだけにそろそろ本格的な受験勉強が始めるんじゃないかと思っていた。
「んー?んー・・・」
「決まってないのか・・・?」
唸る白石の顔は優れない。
意外と言えば意外だった。
俺の場合は色々あって(説明してもいいが長くなるので端折る)ここにいるが白石位の学力があれば行けるであろう大学の選択肢は少なくないはずだ。
「お兄さんと一緒がいいからなぁ・・・」
「白石、少し真面目に話そうか・・・」
居住まいを正す。
もちろん、来てから大事なものが見つかるかもしれないがそんなもん見つからない可能性だってある。唯一言えるのは、後悔しない選択肢が一番いいと思う。」
伝えようとする気持ちが強すぎて説教臭くなってしまった。
気持ちが嬉しくないと言えば嘘になる。
しかし過去は変えられない。
後で悔いても仕方ない。
だからとりあえずいえることは、単純で陳腐だけれども後悔しないことが一番だと思う。
白石が口の中で「後悔しない選択肢・・・」と呟いた
「・・・どこに行きたいかは決まってないのか?」
終始無言を貫いていた白石がこの質問で口を開いた。
「ここよりは、都会に行きたい・・・」
「うん、よし、じゃあ少しずつ方向性を決めていこう。そうなると仙台あたりか?それとも東京?」
「よしよし、じゃあ私大?公立?」
「・・・金銭面的に公立だけど・・・」
「?だけど?」
「・・・最終的に音楽でご飯食べていきたい・・・出来れば・・・大学行かないで・・・」
小さいけれど、白石の言葉で、はっきりと言われた。
俺の視野が狭かったのかもしれない。
社会人になるとかそういう選択肢を用意せず当たり前のように進学という一択だろうと勝手に思い込んでしまっていた。
「そっか・・・」
その後の言葉を俺も、白石も継げなかった。
白石はきっと絞り出した一言だったと思うけれど、その時の俺は肯定も否定も出来なかった。
ただ悩んでいるよりいいと散歩をして川沿いの道で欄干に寄りかかりながら考える。
正直白石があの発言をしてから少しギクシャクしている。
というかあれから白石とは顔を合わせていない。
電話は出てくれないし、メールも一応は帰ってくるが俺がバイト中とかの時に意図的に返されている気がする。
一応の所、白石の目標がそれだというのだから否定なんかはしていない。
単純な話、白石になんて言えば良いのかが分からなかった。
白石がやりたいことなら応援してやるべきだと思う。
だがそれでも「がんばれ」は無責任すぎる気がした。
そしてこの時になってふと思い出す。
いつの日か何か悩んでいそうな素振りを見せて、それでも俺には言わなかったあの日の事を。
情けなさに頭を掻く。
ひとまずは成人してそれなりに成長したと思っていたのに中身なんか何も変わってなくて、
「やりたいことは何だ」って聞いたのは俺なくせに、いざ答えられたら解決策どころか返す言葉にすら困った。
一番最初に考えてしまったのがそんなことだった。
「夢は何ですか?」なんて聞かれたのは結構昔の、そう、小学校の文集くらいだろうか。
そう聞かれていたかと思えばいつの間にやら親や教師でさえ、「現実を見ろ!」と頭ごなしに言うようになっていた。
「大人になったんだから」なんて理由をつけて無理やり現実を見るようになってしまったのかと思うと自分に嫌気も起こる。
幸いにも明日は休日。
あの日からちょうど一週間である。
『明日うちに来れるか?』
内容は簡潔に、ただそれだけの文章を入力して、送信するのに入力の何倍も時間をかけて、煙草一本をフィルターギリギリまで吸ってからようやく送信した。
返信がきたのはその日の就寝前に最後に見た時の事。
『4時過ぎに行くよ~!』
その一言だけだった。
「・・・・」
先程と打って変わって伏し目がちに俺を見る白石。
この話題を先延ばしにすることもできる。
でもそんなことは刹那的なものだ。
それは、逃げだ。
それに何より一番影響があるのは白石本人だ。
自分に喝を入れなおし白石に言葉を続ける。
「別に怒ってるわけでも無ければお前に対して何か言いたいわけでも無いんだが・・・その、何ていうかお前にとってもこの一年は今後の進路を決めるわけでだな?
早めに道を固めておいた方が良いと思うんだよ。お前が本気でそうしたいって言うなら俺はどんな目標でも出来る限り応援するつもりだからさ、現時点でお前がどうしたいのかをちゃんと示してくれよ。」
言い訳っぽくなってしまって自分で思い直したくせに気まずさを覚えながら白石の方を見る。
きっと答えは決まっているんだろうけれど、あえて聞くことにした。
言葉にするってことはやっぱりとても重要なことだと思う。
>>191
書き溜めてから落としてたら順番ミスったw
こっちが先だわ
いつもよりも念入りに掃除をして、いつもよりも何割か増しで緊張しながら、白石を待っていると予定とほぼ同時刻で白石はやってきた。
「お邪魔しま~す!!」
「おう・・・」
「あれ、どうしたのお兄さん?元気ないね?」
「いや、そうか?」
いつも通りの、いや、いつもよりもより元気な白石に多少驚きながら対応する。
「あ、そうだお兄さん!この前の事なんだけどね!同じ部活の子がね!」
「まぁ待てって・・・茶淹れるから・・・」
茶を淹れて一息つきながら雑談をする。
少しすると間が空いた。
「なぁ、白石・・・」
「ん?何?あ、そういえばね!さっきの子の話なんだけど!」
「白石・・・白石!」
白石の話を切るために語気を強める。
本当は分かっているのだ。
白石が何故いつも以上にハイテンションで俺を聞き役に回らせようとするのかも、俺が少しでもそういう雰囲気を見せると強引に話題を変えるのかも、全て分かったうえで、その上で俺は切り出す。
「・・・そっか。」
白石の答えは変わってなかった。
心から行きたいんだと白石の意思の強さをその目から感じる。
そのまっすぐさが眩しい。
夢に向かって進める人間が放つ生き生きとした輝きだ。
「でも、大学は行くよ。やっぱりそれだけじゃ駄目かもだし。」
「・・・ん・・・分かった。」
「さて・・・じゃあお兄さん、改めて勉強教えてねww」
この話はここで終わった。
だからこそ、白石の言葉に俺も笑顔で頷いた。
>>194
書いた方がいい?w
あんまりエ口展開無いんだけど
一年の中で一番短い月はいつの間にか終わって3月を迎えていた。
とはいってもここは津軽。
春なんて雪が降らなくなった時のことを言うのであって、つまりそれは4月の上旬あたりだ。
つまりそれは白石がうちに入り浸る状況は続くことを意味する。
「おにいさーん!お茶切れてるよー!」
「え?マジで?」
「あー、ホントだ…どうすっかな…コーヒーでいいか?」
「むぅ…今日は仕方ないかぁ…砂糖と牛乳は入れてね?」
「はいはいww」
コーヒーは俺、お茶は白石という暗黙の了解ができたのもいつだったか。
それだけ白石が入り浸っているということか。
(そういや3月か・・・)
白石の誕生月だ。
と言っても3月の30日までは結構時間がある。
考える時間があるということだ。
しかしふとここで気づいたことがある。
そう、誕生日なんて女子に何を贈ればいいのだろうかということだ。
駅の近くとはいえ街に人が少ないから結果的にこの店は意外と客足が少ない。
機を見て自分よりも大人な店長に聞いてみた。
「もしかして何か贈り物かい?」
「ええ、まぁ・・・」
目線を逸らしながら答える。
内訳としては気恥ずかしさ二割、輝くジャムさんの眼から逃れるため八割だ。
「そうかいそうかい。いやーそうかーww」
「あの、アドバイスを・・・」
「ああ!そうだね!」
あの薄笑いのなかで他に何を考えていたのだろうか。
「そうだね・・・私はプロポーズの時に花を渡したけどね・・・」
「花、ですか・・・」
「うん、誕生日の花っていうのもあったりするものでね?僕がプロポーズしたときはそうしたんだ。でも後で花を買ったのと違う店に行ったときに店員さんに聞いたら別の花が誕生花だって言われてね。あの時はびっくりしたなぁww」
「花・・・」
案としては良いと思う。
後で調べておくとしよう。
「あー、そっかそっか・・・ごめんね?そうだな・・・僕はアクセサリーだったかな?」
「なるほど・・・」
妥当なものだと思う。
だが白石は意外とアクセサリーとかをしない。
曰く、「ギターを弾くときにいちいち外すのは面倒。」
とのこと。
そうであればペンダントとかが良いのだろうか?
結局バイト中はそんなことをずっと考えていた。
いつものようにうちに来ていた白石が俺に聞いてきた。
3月の末。
新学期を間近に控えて浮き足立ったりする季節。
雪もほとんど溶けかかった頃。
この日は勿論、白石の誕生日だ。
「んー?んー…マフィアの日だな…」
あらかじめ調べておいた答えを答えて白石の反応を伺う。
「え!?嘘!?」
「ホントだ。調べてみろ。」
「…ホントだった。」
「ほらな?w」
「そうじゃなくてさ!こうさ!何かあるでしょ!?」
むくれる白石をなだめるように、
「はいはいwそう慌てんなってwちょっと待ってろ」
少し白石を待たせて隠しておいたプレゼントの箱を持ってくる。
「いや、だからプレゼントw」
「嘘!え、ホントに!?」
「自分で何の日かって振っといていうセリフか?それwまぁでも、あんまり期待するなよ?」
「開けるよ?」
手だけでどうぞと促すと白石は箱のリボンをこれでもかと言うほど丁寧にほどいて箱を開けた。
「・・・時計・・・?」
「ごめん。嫌だったか?」
「ううん、そんなことない!すっごく嬉しい!つけていい?」
確認するように俺を見るので頷くと白石は左手の時計をはずしプレゼントに付け替えた。
「・・・ちょっと大きいか?」
手首につけてみると僅かに大きいのが判る。
何度か握ったことのある太さだけが頼りではやはりぴったりのものは作れなかった。
「お店の方行ったら後でも修正してくれるらしいから今度行くか?」
「うん・・・うん!ありがと!大好き!」
抱き着いてくる白石に悪い気はしなくて、現金だなぁなんて言って俺は笑った。
春先は三日に一回くらいだったのが、夏休みを挟むと一週間に一、二回になり、秋にもなると数週間に一度程度になっていた。
連絡は取るようにしていたので距離感が離れたと感じることはほとんどなかった。
それでも時間は過ぎていって、気が付けばすっかり季節が巡っていて、随分と昔に溶けたと思った雪がもう少ししたらまた降り出す時期になった。
「お兄さんさ、最近どう?」
その数週間に一度の日に、白石は出会ったときのように夜の公園でギターを手に俺に話しかけてきた。
「どうってのはまた抽象的な聞き方だな?・・・そうだな・・・」
思い返してみる。
大学に行ってそれなりに勉強して、空いた時間はバイトだったり伊達らとどこかに車で行ってみたり、十分に充実はしていると思う。
これ以上は贅沢だと思うほどに充実はしているものの・・・
「何か、物足りない・・・かな?」
つい一年半前は知り合いですらない人間が、今ではいないと違和感を感じるほどになっているなんて。
「そっか・・・ふふ・・・そっかww」
「何だよ・・・不気味だなぁ」
「いや・・・同じこと考えてるんだなぁって思ってさww」
「・・・そうだな・・・」
きっと一緒に居られる時間は、もうそう長くない。
少なくとも白石がここに居られる時間は。
それでも今は、少なくとも今は、現実から目を逸らしていることを分かっていながら俺は何も言わずに、ただ微笑んでいた。
「それでいいのか?」
「じゃあ何に乾杯するの?」
「白石の合格を願おうぜ?w」
「じゃあそれで!」
『かんぱーい!』
白石はノンアルコールのジュース、俺はそんなに強くない日本酒を片手に乾杯する。
今日は聖なるリア充たちの日。
クリスマス・イブ。
本来であればキリスト教徒たちがキリストの生誕を祝う日の前夜祭である。
日本においてはリア充の日でもいいじゃないかと個人的に思う。
「しかし受験生がこんなところでこんなことしてていいのかね?もう追い込みの時期だろ?」
「だいじょぶだいじょぶ。今日ぐらいはいいじゃんw」
「まぁ、白石が大丈夫っていうんならだいじょぶ何だろうが・・・じゃぁそうだな・・・今ぐらいは受験忘れて楽しむか。」
「ん?愉しむ?」
「おいこらそこww」
どうしようもない会話をしながら二人で笑いあう。
一服の為席立ちます。
前回同様ご自由にどうぞ。
抑圧からの解放からか白石の機嫌もいつもよりも幾分か良いようだ。
「どした?なんかいいことあったか?」
「んー?いや、何だかんだで一年以上も一緒に居たんだなぁって思ってさぁw」
「まぁ・・・そうだな・・・」
「それにその・・・」
「?」
「去年は、ほら、あんな感じだったじゃない?だから、今年はこういう風に居られて良かったなぁって・・・ww」
少しもじもじしながら白石は恥じらうように、それでいてとても嬉しそうに微笑んでいた。
眩しすぎて正視できないのは俺の気のせいではないだろう。
「来年からは、きっと会うのも結構大変になると思うけど、これからも、こんな風に過ごせたらいいな・・・」
白石が口にする言葉は、きっと真実でその上現実味があって、受け入れたくなくて、どこか寂しげだった。
「うん・・・」
彼女に何と言うべきなのかという答えを、俺は持ち合わせていなかった。
「お兄さん・・・月・・・綺麗だよ・・・」
室内の、その上雪の降るこの日に月なんか見えるわけなくて、だからきっと、言いたいことは一つなのだろう。
「ああ・・・俺もそう思うよ・・・」
雪が降っているせいだろう。
部屋は切り取られたかのように静かで外の音がほとんど聞こえなかった。
急な腹痛から回復したので再開
>>204
どこらへん?
白石はその日から連絡が取れなくなった。
正確には俺の方から連絡を取らないようにした。
センター試験まで二週間を切ったのだからしょうがないが、何もしてやれないのかという無力感と、俺の事でもないのに名状のしがたい緊張感と焦燥感に駆られていた。
「小島君、最近落ち着きないよね?」
「そう、ですかね?」
だからジャムおじさんのこの発言にドキリとしたのは事実だった。
直前の模試はどうやら自分の中で一番いい成績を出せていたらしい白石だったが、それでも油断することなく勉強をしているらしく、自己採点の報告以降ほとんど連絡がなかった。
「もしね、君が迷っているならゆっくりでもいいからしっかりやっていくといい。君以外の事で焦っているなら・・・時間が経つまで待つしかなかったりするものだ。」
年寄りの独り言だよ。
苦笑気味に店長は俺を優しく見ていた。
>>200あるよ
「19時発の青森行きのJRあったろ。」
「だけど・・・」
「ええい!もう一回殴られるか!?会いたいときに会いに行って何が悪いんだよ!彼女だろ!?」
「金ないし・・・」
嘘だ。
使い道がなくて腐っている金が口座の中にいくらかある。
「てめぇ今までのバイト代あるだろ。ないなら貸してやるからいってこい!」
蹴り飛ばされるようにしながら伊達の家から追い出される。
「勝手なことを・・・」
睨むようにドアをみるが無論返事など無い。
それでもこいつには感謝しなければならない。
いつもこうやって背中を押されてばかりだ。
だったら、俺もそれに応えねば。
「三時間半、四時間ってとこか・・・」
考えてみれば遠い、だが遠いといっても少し高めに金を出せばそのぐらいで東京に行けるのだから便利なものだ。
とりあえず適当なボストンバックに最低限の衣類だけ詰め込んで駅へ。
七時の電車はほとんどが学生で、男同士で竹刀を持って楽しそうに話す二人組。
ラケットを持って姦しい女子。
そして幸せそうな制服のカップル。
いいなぁ、あんな近くに居られて。
呟いた言葉は電車のレールを走る音でかき消された。
電車に乗っている間にしたことと言えばとりあえず白石にメールしたことだろうか。
考えてみればバカみたいな文面で(酔いが醒めたとはいえ素面じゃないのだから当然と言えば当然か)、
『今東京向かってるんだがどこに向かえばいい?』
なんて、白石の事を全く考えちゃいない文章で、
返信が来たのはもう大宮を過ぎたあたりだった。
だがそれはメールじゃなくて電話だった。
慌ててるんだろうななんて思って少し頬を緩ませながら車両の連結部分に向かい応答する。
>>205あるよ
「19時発の青森行きのJRあったろ。」
「だけど・・・」
「ええい!もう一回殴られるか!?会いたいときに会いに行って何が悪いんだよ!彼女だろ!?」
「金ないし・・・」
嘘だ。
使い道がなくて腐っている金が口座の中にいくらかある。
「てめぇ今までのバイト代あるだろ。ないなら貸してやるからいってこい!」
蹴り飛ばされるようにしながら伊達の家から追い出される。
「勝手なことを・・・」
睨むようにドアをみるが無論返事など無い。
それでもこいつには感謝しなければならない。
いつもこうやって背中を押されてばかりだ。
だったら、俺もそれに応えねば。
「三時間半、四時間ってとこか・・・」
考えてみれば遠い、だが遠いといっても少し高めに金を出せばそのぐらいで東京に行けるのだから便利なものだ。
とりあえず適当なボストンバックに最低限の衣類だけ詰め込んで駅へ。
七時の電車はほとんどが学生で、男同士で竹刀を持って楽しそうに話す二人組。
ラケットを持って姦しい女子。
そして幸せそうな制服のカップル。
いいなぁ、あんな近くに居られて。
呟いた言葉は電車のレールを走る音でかき消された。
電車に乗っている間にしたことと言えばとりあえず白石にメールしたことだろうか。
考えてみればバカみたいな文面で(酔いが醒めたとはいえ素面じゃないのだから当然と言えば当然か)、
『今東京向かってるんだがどこに向かえばいい?』
なんて、白石の事を全く考えちゃいない文章で、
返信が来たのはもう大宮を過ぎたあたりだった。
だがそれはメールじゃなくて電話だった。
慌ててるんだろうななんて思って少し頬を緩ませながら車両の連結部分に向かい応答する。
三月が目前まで来ていた二月の最期の週にそのメールは届いた。
白石のこの一年の努力が報われたらしく第一志望の大学に合格したらしい。
「素直に喜べないんだろ?」
伊達は茶を淹れに行っていたはずが、いつの間にか後ろに回り込んで液晶画面を見てから俺にこういった。
「・・・さぁ?なんのこt」
「お前と一緒に居て何年になると思ってんだ。こんな時にそんな顔で俺に嘘つこうとしてんじゃねーよ。」
「俺はいつになったらお前に嘘をつけるようになるんだろうねぇ・・・」
「まだしばらく先だな。ま、その時まではお前の友達でいてやるよww」
で、と伊達は続ける。
「実際のとこどうするんだ?遠距離?」
「しかないだろうな・・・」
「あんまり勧めないんだけどな・・・」
伊達の言いたいことが分からないわけではない。
どうしても身近な人間に頼りたくなるのが人だろう。
「やっぱりあれか?自分以外の男と付き合ってほしくないとかか?ww」
「そうだな・・・俺より白石を幸せにできる奴がいるなら普通にそいつに任せた方がいいとは思う。」
「あー、青春すぎて身もだえするなww」
「茶化すな・・・でも、そうだな・・・」
「お?」
「出来れば俺が白石を幸せにしたいし、誰にも渡したくない・・・かな」
「小島・・・お前・・・そんなこと素面で言ってて恥ずかしくないのか?ww」
「お前から振ってきたんだろうが!!!!!」
俺の怒りの咆哮を受け流しながら伊達は笑って、
「まぁでも、白石ちゃんとも話し合ってみろよ。それからでも遅くないだろ?」
「・・・だな。」
ああ、そうか、
もう、白石はいなくなってしまうのか。
「まだ決まってはないけどたぶん、三月の中旬ぐらいにはここからいなくなるかな。」
さも何気なく言っているように聞こえる。
何気ないように見える。
そんなわけないのは分かってる。
近くで見飽きるぐらいに見てきた白石の瞳が少し悲しみを帯びているのも、いつも楽しそうな言葉を紡ぐ上がった口角が些か下がっているのも、
わずかに震えているように見える体も、もう、感じられなくなるのか。
「うわ!どしたのおにいさん?」
カップをテーブルに置いた白石を何も言わずに抱きしめる。
こんなに近くに感じるこの感触が、体温が、彼女の声が、もうすぐ手の届くところから消え去ってしまうのが、ただ怖かった。
「・・・大丈夫だよ?長期の休みになったら帰ってくるし、その、私の所に泊まりにきてもいいし
・・・ただ、それより前に、私が会いたくなっちゃうかもねww」
心の覗いたかのように静かに俺に言う。
その言葉に、腕の力が強くなる。
白石は俺とこのままの関係でいることを望んでいてくれている。
言外に含まれたそのことの嬉しさを隠し切れない。
何をバカなことを考えていたんだろうと自戒する。
「ごめん、痛くないか?」
「大丈夫・・・もっとしてもいいよ?寂しいんだもんね?w」
「・・・うっせ」
それ以上の言葉はなかった。
白石に気を使わせてばっかりだ。
駄目だなぁなんて思いながら、少しでも長く彼女の感触が残るように、ただただ抱きしめ続けた。
「落ち着いたら連絡するね。」
見送りに行った時の白石の最後の言葉はそんなので、本当にあっさりと物理的距離と言うもので遠距離恋愛カップルになった。
五月の下旬の金曜日、突然の休講で四、五コマの無くなった伊達に誘われて早い時間から宅飲みをしていると話題はその話に向かっていった。
「んー?まぁ、ぼちぼちかな…」
「歯切れの悪い答えしやがって…一番最近白石ちゃんに会ったのいつよ?」
「三月…」
「は!?じゃあお前、白石ちゃんが引っ越してからあってないのか?」
「うん…」
呆れ顔でやれやれといわんばかりの伊達。
「GWとかあっただろうが…何やってんだよ…」
「ゼミの方とバイトで首回んなくて…」
一、二年の勉強不足が響いて今のゼミではついていくだけで容易ではない。
「一週間に二回くらい電話してる。っていっても白石もバイト始めたらしいから最近はちょっとすれ違い気味だな・・・」
ハイボールを呷ってから続ける。
「もう、終わりかなww・・・考えてみりゃ当然の事か。俺よりカッコイイ奴だっていくらだっているだろうし、頭良い奴だっているだろうし、
金あるやつだって、性格いいやつだっているだろうし・・・」
自嘲的に笑う。
このまま続けていく自信もない。
そもそも白石に俺は見合わない。
性格も、容姿も、はっきり言ってもっとふさわしい相手がいるはずだ。
中途半端にダラダラ続ければその分だけ白石を拘束することになる。
だったら、いっそ、ここで、
「小島、歯、食いしばれ。」
「は?-ッ!」
右頬に鈍い衝撃が走る。
熱い。
いや、痛い。
この感覚は知っている。
確信を持って数秒後に左を向いていた顔を戻すと勢いで立ち上がった伊達がこれまでの付き合いの中でも見たこともない、怒りとも悲しみともいえない表情で拳を握っていた。
伊達は依然、興奮冷めやらぬ表情で俺を見て言葉を切ることなく続ける。
「お前は『自分で幸せにしたい』って言ったんだぞ!?それはお前のエゴだろ?お前以上に幸せにできる奴がいるかもしれない中で、それでもお前は『誰にも渡したくない』って言ったんだろ?
自分の言葉に責任とれよ!」
伊達に殴られたのが初めてなら、ここまで感情的な伊達と言うのも初めて見た。
いつでも飄々として、冗談ばかり言って、時には友人思いな男が初めて心の奥底を見せた気がした。
何も言えず黙って二人でにらみ合っていると先に根を上げたのは意外にも伊達だった。
「すまん。感情的になった・・・」
バツが悪そうにする伊達。
熱を持つ右頬をさすると伊達がまた視線を逸らした。
「・・・伊達、歯食いしばれ・・・」
「は?-ッ!」
ぼそっというと伊達がそうしたように俺も伊達の顔を一発お見舞いする。
こいつは色々と考えすぎてしまう。
貸し借りはきっちり、かつ早めに無くしておいた方が二人にとって絶対に良い。
「・・・いてーだろ?」
「俺のほうが絶対弱かったのに・・・」
「嘘つけ!全力だったろ!」
「全力なわけあるか!まだ5割も言ってねーわ!」
「ああ?じゃあ俺4割!」
「んなわけあるか俺は3割だったぞ!」
にらみ合って二人で吹き出す。
腹を抱えて笑って、笑いすぎて立っていられなくて、ひとしきり笑うと伊達が一杯あおってから、
「で、どうするんだ?まだ時間あるぞ?」
「あ?」
「新幹線。」
確か新青森発の東京行きは…19時44分のがあったはずだ。
現在時刻は18時30分。
ちなみに新青森までは約40分。
間に合わないこともない。
所用にて夜まで落ちます。
まだ残ってたら書きに来るんで。
誰もいないだろうけどw
「もしもし、白石?」
『あ、お兄さん?良かった、つながった!今、サークルの新勧終わったところでさ!すぐ行くか―きゃ!ちょ!先輩!止めてくださいって!』
「!?白石?」
『あ、だいじょぶ、だから!今から向かうね!』
「あ、おい!・・・切れた・・・」
一抹の不安が脳裡をかすめる。
一時間もかからないのに時間が経つのが驚くほど遅くて、やきもきしながら待っていると駅についた。
ただただ落ち着かなくて飛び降りるように新幹線を降りて白石に指定された日本橋口についたが白石の姿が見えない。
まだついていないのかもしれない。
少し離れて人が来なさそうなところで一服し始める。
「しっかし・・・」
頭を掻く。
昨日のうちは自分が東京に来て白石を待ちながら一服しているとは考えていなかった。
人生とは何があるか分からないものである。
二本目に手を伸ばしたタイミングであろうか。
ケータイが不意に震えた。
電話だ。
「白石?」
俺も
ここまで何回も言ってるけど長々と申しわけない
もうちょい続くんで見てくれると嬉しい。
ここまで何回も言ってるけど長々と申しわけない
もうちょい続くんで見てくれると嬉しい。
男はともかく女の子は上京したい思考高いしな。神戸に住んでるけどそれでも一定数は東京行ったしやっぱり憧れるんだろうな。
>>219
俺も上京思考強かったけど考えてみたら女子の方が都会行きたがるの多いかもな。
『あ、おにーさん?今着いたんだけどもういる?』
後ろがざわついているのは何だろうか。
もう終電近いから人が多いのか?
「ああ、もうついてる。」
『そっか。いまから行くからもうちょっと待っててねー。』
「ん。」
手の中の箱からもう一本取り出す。
考えてみれば明日は昼からバイトが入っているし、月曜にはゼミのことがあって色々やらねばならないというのに、こんなに考えなしに動いたのは久しぶりだ。
我ながらバカみたいな行動力だと今更になって少し笑う。
どれもこれもあのバカメガネのせいだ。
後で奢らせてやる。
ちょうど吸っていた煙草が終わるころになって白石が俺の前に現れた。
「ごめん!おにーさん!お待たせ!」
呼ばれて振り返る。
一瞬、呼吸が止まった気がして、流れる時間が遅れた様な気がして、瞬時に世界が加速する。
見慣れた小さな唇も、よく笑う目も、頭の中のイメージと何一つ変わることはないのに、数か月会わないだけでより綺麗になったと感じるのは何故だろう。
相変わらず化粧気はほとんどなくて、それなのに少し伸びた髪が一気に大人びた印象を持たせた。
先輩男かよ
バッドエンドは嫌なんだが?
ここまで何回も言ってるけど長々と申しわけない
もうちょい続くんで見てくれると嬉しい。
「あ、こんちわー!」
「うぇーい!」
「へぇ、彼が白石ちゃんの彼氏さん?」
傍目からでも大分酔っているのは分かる。
男が3人、女が白石を含めて4人。
「新勧やってくれた先輩たちなんだけど…その、お兄さんの事話したら見たいって言い始めて…」
「ども!○○でぅえーす!」
「ちょっと、先輩!暴れないで下さいよ!」
仕方なさそうに白石が笑いかける。
止めろよ。
喉元までその言葉がきて、止まる。
そんな顔を、俺以外の奴に向けないでくれよ…
白石の肩を借りている男がこちらを見て名前を言うが頭に入ってこない。
肌が粟立つのが分かる。
頭の中で声がする。
お前は何だ、白石の何だというんだ。
一方的に睨み付けていると、後ろにいた男の中でまだそこまで酔っていないように見える男が白石から男を引き受ける。
>>235
今見たら飛んでたごめん
そこの分上げる
読みにくいかもだけど・・・
「でもどうしたのお兄さん?いきなり来るなんてらしくないけど」
「いや、その・・・会いたくなった・・・じゃ、ダメか?」
「「「「おおおおーーーーー」」」」
「うぇ!あ、ぅ・・・」
赤面しながら俯く白石。
「あれあれ?白石ちゃん?」
「これはキスの展開かな?」
「え、あ、こ、困りますって先輩!お兄さんも何か言ってよ!」
「・・・・・」
思考は別の事を考えていた。
昔から無防備だったとはいえここまでとは…
「あ、す、するの?・・・ん・・・」
気が付くと少し背伸びをしながら白石が目を瞑って俺の方を向いている。
そんな白石の腕を引っ張って適当にその辺のタクシーをひっ捕まえて乗り込む。
「え!?うわぁちょ!ちょ・・・おにいさ・・・」
俺の突然の行動に戸惑う白石。
「え・・・○○駅の近くのアパート」
「すいません、そこの駅まで行ってもらえます?」
運ちゃんは不思議そうに俺らを見たが何も言わず小さくうなずくとそのまま発進した。
あらゆることにいら立つ。
こんなに心かき乱さる位なら、もっと早く白石に会いに来るべきだったということにたった今気づいたこととか。
肩を貸していただけの男に対して小さく嫉妬していることも。
それらをみっともないとか情けないとか認識していながらこんなことをしている自分にも腹が立つ。
「お兄さん・・・痛い・・・」
「あ、わ、わり!」
思考に気を取られて力が入りすぎていたらしい。
慌てて手を放すと掴んでいた部分を白石がさする。
「その、すまんかった・・・」
白石の方を見られなくて窓の外に視線を送りながら謝罪する。
「強引すぎだよ・・・」
些かトゲのある口調でそういって白石は俺が渡した時計を握っていた。
信号のたびにミラーでこちらの様子を見てくる運ちゃんの視線がウザったくて痛く刺さった。
料金を払ってタクシーを降りる。
「それで、何でお兄さんがここにいるのかな?」
視線が痛い。
それでも尚優しい口調なのがもっと痛い。
「いや、その、だからなんというか・・・こう・・・」
考えてみりゃ、なんでなんだろう。
明日は昼過ぎからバイトが入ってたりとか、月曜にはゼミの課題とかもあるのに。
「ちゃんと、言って?」
目の前の白石の瞳が不安げに揺れる。
ああ、そうだ。
ちゃんと言わなければ、電話でも話せるのにここに来たのだ。
目の前にいるからにはしっかり伝えなければ。
文章にならなくても、
「あ、のな、その・・・白石がここに来てから俺とゆっくり話す機会無かったと思うから、その、えーと・・・」
言葉に詰まる。
これ以上何を言えば良いのだろうか。
「・・・そっか、不安だったんだね・・・」
心臓が鷲掴みにされたような感覚を覚える。
どんなに思っていても直接は言葉にしなかったそれが白石の口から出た。
書き溜め終了の為ここからは通常運行
情けなさと、白石を信じていないかのように感じてしまうその感情は、
もしかしたら付き合いだしたころからあったかもしれない。
それが白石の口から零れると、堰を切ったように感情があふれてきた。
「不安だよ・・・他に説明のしようがないくらい物凄い不安だよ。
俺より色んなことでスゲー奴とか一杯いるだろうし、だから・・・」
だから、どうというのだろう。
白石が望むようにするのが一番幸せになるんじゃないのか?
だったら、俺は…
「はぁ・・・おにーさん。ちょっと・・・」
呆れたように嘆息した後に白石が俺を呼んで、
着ていたシャツの襟を引っ張られて、
白石の顔が近づいて、
何か月かぶりにする彼女とのキスは、触れるだけのもので一瞬で離される。
「・・・煙草臭い・・・」
「・・・面目ない・・・」
白石と会えなくなってからと言うもの、煙草の消費が速くなった。
原因は言わずもがな。
小言を言って、それでもまだ襟をつかまれたままの不思議な体勢で白石は俺を見ている。
「は?そうかな・・・」
そこまで四六時中と言うことではないと思うのだが・・・
「今の口ぶりだどどうせお兄さんの事だから『白石が幸せなら俺は・・・』とか考えたりしてるんでしょ?」
図星である。
やはり俺は分かりやすいらしい。
「お兄さんはさ、もうちょっと自分にしてほしい事とか、したいこととかもっと言っていいと思うんだ。
そこでぶつかることもあると思うけどその時はぶつかりながら進んでいこうよ。
・・・私も、もっと素直になるし、もっと言いたいことがあるし、伝えたいことあるし・・・だから・・・」
顔を赤らめて俯く白石。
泣きそうな顔をしているのは顔を見なくても声で分かった。
不甲斐ないばっかりだ。
支えられてばっかり。
今からでも変わりたいな。
変わって、こいつのことを俺がしてもらったみたいに支えていきたい。
「ごめんな。いっつも、頼りがいなくて、迷惑ばっかりかけて・・・」
襟を掴む白石の手にそっと触れる。
変わりたい。
変われるかな。
「・・・ほんとだよww」
「うん。ごめん・・・ありがとう・・・」
握っていた白石の手が襟から離れ、そのまま俺の手を握った。
「・・・じゃあいこっか。」
久しぶりに、本当に久しぶりに向けられた笑顔を見て自然と幸せになる。
主語がない。
必要ないからと言えばそれまでか。
握った彼女の手はこれまでよりも大きく感じた。
土地が土地だけに7畳一間で6万強という物件だが、
水準が青森のそれで固定されている俺からしたら高いだけでむしろこの条件にしては中々安い場所なのだろう。
「はー・・・何か疲れた・・・」
肩に掛けっぱなしだった荷物を下ろして言葉が自然に漏れた。
「不安の種を無くせたからじゃない?」
・・・あながち否定できないのはどこかで事実と認めているからだろう。
「何か私も疲れちゃった・・・もうお風呂入って寝よっかな・・・」
「もう12時半だしな・・・」
「どうする?お兄さん一緒に入る?」
「あほか!お前なぁ・・・」
俺は俺で大学入ってから一人で女子の部屋何て初めてなわけで、
色々考えてしまったりしているときになんてことを言ってきてんだこいつは!
「嘘々wでもどうしよっか?お兄さん先に入る?」
「いや先入って来ていいぞ。その間に荷物の整理でもしてる。」
「ほんと?なら結構助かるかな。
正直新歓飲みだったから先輩たち遠慮なく煙草吸ってさ・・・」
あ、と思い出したように白石はケータイを取り出して操作し始めた。
「あちゃ、やっぱり。先輩たちにすごく心配されてる・・・」
「あー・・・」
まぁ彼らからしたら
「突然現れた彼氏を名乗る男がいきなり後輩を攫った」
というシチュエーションなわけだから当然と言えば当然だ。
何故だろうか。
白石の先輩たちも伊達らと同じような匂いがする。
「お兄さんシャワーでいいなら私もいいかな。じゃあ先に入るけど覗いちゃだめだよ?」
「あーはいはい。」
「あ、下着は漁ってもいいけど戻しておいてね?w」
「漁んねぇし!お前の俺の評価どうしたんだよ!?」
いくらなんでも散々すぎる。
「入りたくなったらいつでもいいからね?w」
すっかり上機嫌な白石はそう言って脱衣所に入って行った。
何とはなしに部屋を見回す。
整理が行き届いた部屋。
年相応の女子の部屋だけにぬいぐるみやらと言ったものは見られないが
飾り気の無さはある意味で白石らしいといえる。
唯一彼女の部屋らしさが主張されているものと言えば、
部屋の隅でスタンドに立てかけられている彼女の赤いギターくらいのものだ。
出会ったころから彼女が使っていたそれは変わらずに彼女の手で演奏されているようだ。
目に留まるものが無かったというのもあって持ってきたバックを開けて整理を始める。
「?」
薬局の紙袋。
ポルトガルの隠語的に言えばヴィーナスのシャツが出てきた。
察しが言ってとりあえずひっつかんだケータイの掛け慣れた番号をコールしようとして、望みの相手から電話が来た。
「てめぇ伊達コラ!?」
『おお!何?その感じからするとまだ使ってない?というか今気づいた感じかな?w』
何だってこいつは俺の重要な時には必ず現れて余計な手間を漏れなく増やしてくれるのだろうか。
中身が数個入っている位なら分かるが箱ごと入ってるってどういうことだ?
全部のバックに入れたとでも言うのか!?
『エスパーですから!』
「それは違うだろ!」
『とにかくありがたく使えよ?どうせお前じゃコンビニ行って買ってくるなんてできなかっただろ?』
出来なくはないのかもしれないが行きたくはない。
「うるせぇ!大体なんだって、その・・・仲直りして直ぐにそんな
・・・そもそも白石に会いに来たのはそういう理由じゃないのはお前だって知ってるだろ!?」
『まぁ・・・お前ならそう言うんだろうけどさ・・・女の子は置物や宝石じゃないんだぞ?』
雷に打たれたような衝撃。
反論の勢いが削がれる。
晩飯の為しばしお時間いただきます。
「そりゃ・・・そうだけど・・・」
『お前の事だからどうせ色々考えてんのは分かるけどさぁ
・・・好きになってくれてる女の子なんだろ?お前が好きになった子だろ?じゃあ信じろよ。』
二の句を告げない。
伊達の言う通りかもしれない。
でも、いいのか。
白石はそれでいいのか。
本当にそれで…
『嫌がらなかったらOK!』
「あほか!・・・とにかく、お気遣いありがとう。
必要なら使わせてもらいますよ!じゃあな!」
伊達が口を開く前に電話を切る。
あいつの事だ。
繋がっていればまた何か言ってくるだろう。
「お兄さん?ダイジョブ?なんか怒鳴ってたけど。」
「い!?あ、ああだいじょ・・・」
予期せぬ声に思わず紙袋をバックの中に突っ込んで振り返る。
タオルで頭を拭きながら大きめのTシャツ一枚…って…
「お、お前ちゃんと服着ろよ!?」
怒鳴りながら顔を思い切り背ける。
「えー?いっつもこの格好なんだけどなぁ・・・」
「勘弁してくれ・・・心臓に悪すぎる・・・」
白い脚が何に遮られることもなく目の前にある。
湯上りということもあってかいつもより艶っぽく見える。
反応ないんで詳細には話さず続けます。
>>242
結構書いてきたし最後までアカンかな?
次の日は聞きなれない生活音で覚醒した。
「・・・んん?」
見慣れない天井。
濃霧の様に晴れない思考。
電車の通る音。
記憶が蘇ってきて飛び起きる。
「あ、お兄さんおはよう。目、覚めた?」
「・・・お陰様で。」
急に起きたのが効いたのか、はたまた夜の事を思い出して爆縮したのか心臓が異様に荒々しく動く。
「ご飯出来ちゃってるからさ、お兄さん顔でも洗って来てよ。」
「おお・・・」
回らない頭なりに理解したのは「新婚みたいだなぁ」なんていうことだったあたりが馬鹿っぽい。
「白石さ、料理上手くなった?」
「え?そうかな?やっぱりこっちはいろいろ高いから自炊は心掛けてるけど・・・」
そういって自分で作った味噌汁を啜る白石。
「何だろう・・・こう、温かいのかな・・・」
「え?いっつも冷めたもの食べてるの?」
「いや・・・そうじゃ・・・まぁいいか」
人の温かみと言うのだろうか。
そういうのが感じられる。
再開。
「・・・お兄さんってさ、昔から少しも変わらないよねww」
「あ、当たり前だろ・・・何言ってんだよ。」
白石の方を向けないので壁に向かって話す。
不意に、白石が歩く音がしてそのまま俺の背後で止まると、流れるように背後から抱き着いてくる。
「私さ、変わらないって凄く難しいと思うんだ・・・でもね、変わっていくのも同じくらいかそれ以上に難しいと思うの。
どっちがいいとかじゃないと思うんだけどね。
・・・人って変化しないと飽きちゃうし飽きられちゃうと思うんだ・・・」
ここまで言われて分からない程バカな俺でもない訳で。
まぁなんというか、背後から押し付けられている感覚が明らかにTシャツのそれだけなのを感じたりするのもあって・・・
どうすべきかは大体分かってるつもりで・・・
俺のとった行動は、
「白石・・・風呂、入って来ていいかな?」
「話聞いててその答え・・・?」
「体、綺麗にしてからのほうがいいだろ・・・?」
「・・・早くねww」
ふと白石の体温が消えて、そのままトコトコとベットに向かう。
後ろ姿は普通に見えるが案の定耳は相応に赤くなっている。
下着と適当にTシャツを選んで脱衣所に行くと、鏡に映る自分も人のことが言えなかった。
・・・ここから先詳細に話す?
>>248
すまん。
俺の文才の無さを呪ってくれ・・・
努力はしてたんだ・・・
「?何で笑うんだ?」
俺の説明でおかしなところがあっただろうか。
「いや、お兄さんにしてはそんなに後先考えずに行動するのは珍しいなと思って・・・
それに・・・」
「それに?」
「・・・そんなに思っててくれたんだってちょっと嬉しくて・・・w」
「ッ!~~~!!!」
声にならずに小さくもだえる。
なんだこいつ!
可愛すぎだろ!
「すまん白石・・・先に電話かけてくる・・・」
理由をつけて部屋を後にする。
正直言って理性が持ちそうになかった。
「よく耐えた・・・俺・・・」
自身を称えながらそれでもなお脈動する鼓動を落ち着かせジャムさんに電話を掛けた。
「あ、店長。お疲れ様です。小島です・・・」
『ああ、小島君どうしたの?何か病気でもしたかい?』
ここで「そうです!」
と元気いっぱいに言えるだけの胆力は俺には無く、
「いえ、実は・・・」
かいつまみながらも洗いざらい事の子細を暴露する。
エ口描写がどうしても書けないのでご勘弁ください・・・
「そういや今日どうしよっか・・・お兄さんは?どっか行きたい?」
「どっか行ったりするか?一応金はあるが。」
金といってバイトの事を思い出す。
現在時刻は八時半。
九時過ぎに掛ければジャムさんは電話には出てくれるだろうから時間はあるが・・・
正直気は進まない。
自分の都合だけでこういったことをした手前、気が滅入るのは当然と言えば当然だった。
「どしたの?もしかしておいしくなかったかな・・・?」
「ん?ああ、いやそうじゃなくてな・・・」
「・・・話せないような話?」
そう寂しげな顔をしないでほしい。
俺が悪いみたいじゃないか。
「いや、その・・・実はな・・・」
話さなければまた誤解を生む可能性もある。
俺が話したくないというだけでギクシャクしないためにもここは話すことにした。
理由を話すと白石は呆れた顔をして、そのあと小さく微笑んだ。
>>250
ホントすまん・・・
というかエ口系って文字で書くのムズイの良くわかったわ・・・
官能系かける人凄いわ・・・
経緯をかいつまんで結果を文字にしてみれば
「彼女が心配なので後先考えず新幹線に飛び乗って今東京です!」
というちょっと頭のかわいそうな文章になってしまう。
そんなことを聞いて直後。
ジャムさんは盛大に俺を笑った。
「ぶは、ぶははははは!!!こ、小島君!君最高だよ!!!」
「・・・そこまで笑わないで下さいよ・・・」
俺が悪いから強くも怒れない。
というかこの場においては怒る権利すら俺は有していない。
くつくつとジャムさんは口の中で笑いを蓄えたまま、
「い、いや、し、失礼した!・・・ぶふ!」
「店長!」
流石に少し語調が強まる。
まだ笑う店長はしかし、
「小島君の男らしさに免じて今日は小島君は休み!代わりに福士君呼ぶから、精々遊んで来ると良い!
じゃあ、私も仕事なのでここで!あ、お土産よろしくねー!」
「あ、てんちょ!・・・きれた・・・」
恐らく気を使わせないためだろう。
本当に尊敬できる大人である。
お土産はちゃんと持っていこう。
>>252
気にするなとは言わないが全く持って普通の感じだったよ。
お互い初めてやったけど
「あ、おかえりお兄さん。どうだった?」
少し不安そうにこちらを見る白石。
「ああ、店長が上機嫌で笑って許してくれたww」
「よかったじゃんwwじゃあどうしよっか?お兄さん予定も立てないで来たんでしょ?」
「だな・・・遊びに行く場所にならいくらでもあるがどこ行こうか?」
「んー・・・じゃあさ!行きたいところあるんだ!」
はしゃぐように言う白石に、ご飯食べてからなと笑って言う。
久しぶりに心穏やかな休日を送れそうだ。
「んーーーー!やっぱりいいねー!」
「来たいっていうからどこかと思ったら…」
白石が言った場所は意外にも海だった。
レンタカーを借りたほうが色々ゆっくり見られるんじゃないかというと白石も同意して近場で車を借りてから来たのはまだ海開きもしていない湘南の海だった。
俺が風呂から上がってとりあえず部屋に着替えて向かうと白石が髪乾かしてたから、
「やろうか?」
って聞いたら
以前上機嫌なまま「うん」って言われたんで髪乾かしてやって、
そのあと今度は白石が「やってあげるよ」って言って俺の髪乾かし始めて、
乾かし終わってから流れで・・・みたいな。
よく見たら反応書いてなかったな・・・
電気ついてたから消して、
その時点でいつもとはうって変わって受け身な感じだったけどし始めてからは終始声出さないように耐えてた。
逆に俺はそれに燃えていった感じ。
もうちょっと色々選択肢はあっただろうとおもうのだが。
「えー?いいじゃん別に。お兄さん嫌がらなかったし。」
「いやまあそうなんだが・・・」
というのも白石が行きたいといったからであり、俺としては行きたい場所が無かったというのも要因として大きいと思う。
「海開きもしてない海何て来て楽しいのかって話だよ。」
「別に場所なんてどこでもよかったんだよ。
ただ何でもない日を特別に思えるように来たんだしww人いないから静かでいいしねー」
「・・・特別か?」
「そう、特別。あのお兄さんが私に会いたくて後先考えず自分から新幹線に乗って連絡もなしに来てくれた記念w」
「おま・・・はぁ・・・ww」
口にしかけた抗議の言葉は先を行く白石が向けた笑顔を見て毒気を抜かれてしまった。
代わりにこぼれたのはため息と、同時に出た笑いだった。
こんな何でもない日のこんなことに価値を見出せる白石を羨ましく思いながら答えるように俺も笑う。
「あー、ギターもって来ればよかったなー。絶対気持ちよかったのに・・・」
「あー、それも見たかったなぁ、それを言うんだったら俺もカメラ持ってくりゃよかったな・・・」
以下>>256から続き
「お兄さん何撮るの?女の子?ww」
「撮るような知り合いなんてお前ぐらいしかいないわw
そうだな・・・バイクで目的もなくブラブラして、気に入ったもの撮るだけだよ。入道雲とか、野草とか、田んぼで田植えしてるばっちゃとか。」
「バイク買ったの!?乗りたい!」
「あんまデカくない奴な。就職はこっちになるだろうからしたらタンデムでどっか行くかw」
「行きたい!一杯!いろんなところ!」
少し強めの風が吹いた。
前を行きながら振り返って俺を見ている白石の髪が靡く。
一枚の絵の様なその光景に微かに見とれて。
カメラを持ってこなかったことを心底後悔して、
白石に「見とれてた?ww」なんて言われたけれど、「ばーかww」って笑うので精一杯だった。
夜になって夕食が終わり、二人でお茶を啜ていると白石がさも平然とその話題を振ってきた。
ここまでその話題に触れてこなかったのはお互いに理解して、かつそれを避けてきたからだろう。
俺がここに居られる時間なんぞたかが知れているということが。
「んー・・・そうだな・・・明日の昼くらい・・・かな。」
少しの間を置いて言ったのは、
白石と居たいと思いながらもあまり長引くとどうしても帰りがたくなるのも理解しての言葉だった。
「そっ、か・・・」
露骨に落ち込む白石。
その・・・何というかこう・・・ダメージがデカいので出来ればもう少し分かりにくく拗ねるとかにしてほしい。
「今日で最後なんだね・・・」
小さく呟いた言葉がやけに大きく響いた気がした。
「・・・今生の別れでも無し、そんな顔するなよww」
「・・・お兄さんは寂しくないの?」
そんなに潤んだ瞳で見つめながら言われたら困るのは白石だってわかってるだろうに、
言葉にするのに詰まって頭を掻くと先程よりもさらに白石の声のトーンが下がった。
「寂しくないのか・・・」
「いや、寂しい!すっごく寂しい!もう帰りたくないくらい寂しい!」
まくしたてるように言うと驚いたように俺を見た後で白石がくすっと笑う。
「お兄さん必死すぎw顔真っ赤だよww」
「白石もな・・・」
二人で向かい合って赤面する。
何年経っても変わらないものだと思って口だけで笑ったのは秘密だ。
何をするでもなく二人で雑談をしたりしていたが、
昼間に出かけてきたのが響いているのか時計が12時を回ると二人とも口数が少なくなってきた。
「・・・やだ・・・」
「お?」
「まだ、やだ・・・・寝たらすぐに朝になっちゃう・・・朝起きて、何時間かしたらお兄さん、帰っちゃう・・・」
「白石・・・」
言いたいことが分からない訳ではない。
そりゃ一日、二日会いに来るだけでも中々大変なのだ。
次に会えるのだって二人の予定が合う時でなければいけないのだからいつになるかは分からない。
「そうはいっても起きてたって朝にはなるしなぁ・・・」
気持ちは俺も同じなわけで俺も俺で強く言い返せない。
「・・・てほしい・・・」
「ん?」
「・・・一緒に寝てほしい・・・」
「・・・・・」
「な、何で黙るの!?」
「昨日の今日でそれかよwエ口いなぁwwと思って・・・」
「ち、違!そっちじゃないし!そ、添い寝!」
「あー、はいはいwwほれ、歯磨いてとっとと寝るぞw」
「・・・意地悪・・・」
頬を膨れさせる白石を見て内心こんなに楽しいことはないという気持ちで一杯だった。
きっと表情も隠しきれていなかっただろう。
「電気消すぞ?」
「うん・・・」
明かりが消える。
「・・・豆電球位つけてていいよな?」
「うん・・・」
暗すぎると昨日のことを鮮明に思い出してしまいそうだった。
「白石さ・・・くっつきすぎじゃね?」
「あ、ごめん・・・あっつい?いやだった?」
いや、あの・・・単純にドキドキするんです。
「言ってくれないと分かんないなぁ?ww」
豆電球の薄明かりの中でも分かる。
いつものように口の端に笑みを浮かべて俺を見る白石。
「・・・言わせたいだけだろ?ww」
「さっきのお返しww」
二人で笑いあって、どちらが言うともなく近づいて唇だけ合わせてキスをする。
「・・・寝るか・・・」
「・・・うん・・・」
そういって白石が更に俺の方によって来るとそのまま抱き枕のごとく俺に抱き着く。
「ちょ!?」
「んー?いいじゃん。私こうしてた方が落ち着くんだよねーww」
・・・当たってるんですがそれは・・・
「お兄さん暖かい・・・体にヒーターでも入ってるの?w」
「単純に緊張してるからこれ以上俺をからかうな・・・いや、ホントマジで。余裕ない。」
「はいはいwwこのくらいで勘弁してあげるよw」
二人の声が消える。
「ん?」
「・・・ごめん、何でもないや・・・」
「・・・ん」
白石が考えて言ってこない以上はそれがこたえだろう。
聞きたい気持ちを押し殺して眼を閉じる。
腕の中の白石の体温がより鮮明に感じられる。
柔らかい。
ちょうど俺の顔の近くに白石の頭が来ている。
すげーいい匂い。
シャンプーとかかな?
眠ろうと考えて呼吸をしているのに白石の方に意識が行ってしまって中々寝付けない。
瞼を開けてみる。
オレンジ色の薄明りの中、白石はというと、
「・・・すぅ、すぅ・・・」
まさしく穏やかと言った具合に早くも寝付いてしまった。
心の中で寝落ちかよと小さく笑う。
しかし、
「・・・何ていうか・・・」
子供みたいだ。
よく食べて、表情豊かに笑ってはしゃいで、
かと思いきや甘えて来たり拗ねてみたり、疲れたらすぐ眠る。
まぁ・・・こういった裏表のなさが好きなんだろうけれど、
考えたことがふと口をついていた。
時間的にではなく、将来的に。
結構本気で白石が幸せになって欲しいとは思っている。
でも、仮に俺じゃなくて横に立っているのが伊達とかだったら俺はなんて思って、何て言うんだろう。
いや、止めよう。
考えてもしょうがない。
そうなったらそうなったときである。
瞳を閉じて深く息を吸う。
白石の匂いが微かにして、温もりが感じられて。
心地よさを覚えながら、悩んでいたのがバカみたいにスッと眠りについた。
東京駅の構内で色々と土産を買っていれば時間になるだろうという白石の意見で色々物色しているとき気になって聞いてみた。
それに合わせてバイトの休みとか帰省とかを考えようというものだ。
「んー?そうだなぁ・・・いつになるかな・・・」
「確定はしてない感じか?」
「うん。大学は八月入ったらすぐ終わるんだけどバイトとかサークルとかあるし。」
「なるほど・・・まぁ早めに教えてくれると助かるな。」
「あ!じゃああれだ!こうしよう!」
「今決めるのかよwいつ?」
半ば呆れて白石を見る。
「おにーさんが『帰ってきて』って言ったときに帰ってくるね!」
いつもの俺をからかうような笑顔ではない。
白石は俺に満面の笑みで言って見せた。
「・・・したら、意外と早く呼ぶかもしれないぞ?」
「心配し過ぎだと思うよww私こう見えて一途だし、それに・・・」
「うん?」
「多分お兄さんが思ってるよりも、私はお兄さんの事好きだからww」
「・・・土産買ってくる・・・」
余りの殺し文句にその場に居続けることが出来なかった。
適当に見繕っておいた土産をレジに持っていく。
背中から聞こえる白石の声が今度は上機嫌で笑っているのがすぐに分かった。
「お兄さんさ・・・人前なんだからこれ止めた方が良いんじゃないの?」
白石がそう言いながら繋がれた自分の右手を少し上げて見せる。
「・・・もうちょいで帰るんだから勘弁しろ。今回だけだ。」
しょうがないなぁといったままそれ以上は白石は何も言わない。
「あーあ、でもお兄さん帰っちゃうのか・・・私この二日間の予定色々つぶれちゃったよ・・・」
「・・・俺にどうしろと・・・?」
もう帰るところなんだが。
それを聞いて白石は小さく笑うと、
「じゃあ今度埋め合わせね?w」
良い彼女を持ったと実感したのは数えきれないがこれは特に印象的だった。
次に会う口実を彼女の方から俺にくれるのだから。
そう言うと白石がつないだ手を一度離して、指切り、とだけ小さく言う。
いつだって白石は変わらない。
こういったことを自分から素直に言うところも、それを自分で言いながら恥ずかしがるところも。
小指だけ再びつなぐ。
『まもなく電車が到着します。白線の内側まで・・・』
アナウンスが流れた。
「指切りげんまんうそついたら・・・どうしよっか?」
「しまらねぇなぁww」
繋いだまま、離すことなくいると電車が来てしまった。
「じゃぁその時決めよっか!」
「はいはいww」
つないだままいると電車のドアが開いた。
もう、時間はない。
「・・・」
「じゃあな」も「元気でな」もちがう。
数瞬だけ考えて、
「またな。」
自然に出た言葉が一番しっくり来た。
とりあえず区切りが良いのでここで一服挟ませていただきます。
再開は10時半からで。
「・・・うん。」
白石が応えてから俺が歩き出すと、一歩目で白石の腕が少し伸びたのが判って、
二歩目でほとんどほどけかけて、三歩目で白石の温度が消えた。
振り返ると足が止まりそうな気がして振り返らなかった。
引き延ばされたようなような感覚を覚えた数秒は、時間の流れの中に自然に溶けていった。
乗ってすぐに発車のアナウンスが流れる。
ドアが閉まる。
振り返ると白石が少し寂しそうに笑っていた。
声も聞こえない中でなにを言うでもなく、俺はただ笑って見せた。
白石も応えるように笑う。
車窓が徐々に捉える世界の位置を変え始める。
徐々に白石が遠くなっていく。
寂しさもあったが来た時よりも軽く感じる肩の荷物が確かな充足感を与えてくれていた。
終点まで三時間はあったが行きよりも気持ちはずっと楽だった。
白石と別れたのはそれから二ヵ月後だった。
ワカサギ旨いよな。
そこまでちゃんと見てくれてるとは思わなかったわ。
なにこれ…夏休み前に別れたのか
続きめっさ気になるわ
>>276
追いつくまで見てくれたのか!
ありがとう。
終盤入ったから今日中で終わらせたいな。
別れようとは白石から切りだされた。
俺からしてみれば寝耳に水とはまさにこのことで、
俺の方に落ち度があれば何とかすると言ったが、
白石からはそういうことではないという答えが返ってきて以来連絡が取れなくなり、
俺も俺でゼミとかインターンシップとか就活とかが始まってしまってまともに白石の方にかまえる状況ではなかった。
分かっている。
分かっていた。
自分の中ではそんなことを言い訳にして逃げていたのだ。
理由をこじつけてフラれたという事実から目を背けていただけだ。
そうしていることしかできなかったのだ。
ただ目の前のことに没入することで名状できない感情を振り払おうと必死になった。
幸か不幸かそのがむしゃらのお陰で俺の身の丈には合わない程の企業から内定をもらって、
気付いたら東京で働く少し若い一端の社畜になっていた。
だからまぁ、言い訳になってしまうが「俺以上に良い奴に出会ったのだろう」という諦観に似た感情によって白石には直接会いに行かなかった。
時期もあってバイトを止めてジャムさんと会わなくなって、互いに忙しくなって伊達に会う機会が減って行けば俺に親身になってくれる人間なんぞいなかった。
どうも俺は伊達やジャムさんの様な支援というか背中を押してくれる人間がいないと前に進めないらしい。
頭でごちゃごちゃ考えていながら結局白石に会いに行かなかった理由はつまりそういったことなのだろう。
そんなこんなで大学を卒業した俺だったがこれが予想以上に時間の流れが速くて驚いた。
というか体感時間が早く感じたのだろう。
失ったものの大きさを見ないために仕事に没頭していけば評価が上がって、
嬉しくないことに相対的に仕事が増えていって、それにまた没入していくという循環だった。
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