累ヶ淵という怪談があるんだけど
俺はその怪談のように生まれてすぐ母親に見捨てられた
生まれた時に俺は口唇裂だったようで
しかも完全唇裂という鼻の孔の中から唇まで割れている状態だった
生まれた俺を見た母はこんなの私の子じゃないと喚いたらしい
医者の説明や早い段階からの治療で今では傷跡も
ほぼ気にならないくらい綺麗になる事もいくら説明しても
母は知らない聞こえないと全部拒否
結果両親は離婚し、俺は父親に引き取られた
その父と父方の親戚のサポートのおかげで
小学校に上がる頃には傷跡は残るのものの
他の子たちと変わらないクソガキへと成長し
中学に上がる頃には傷跡も目立たなくなってた
中2のクラスの中の比較的目立たないグループの中に
後の嫁ちゃんがいた
この娘がある時からいじめられるようになった
目立たないグループといっても嫁ちゃんはかわいいよりも綺麗と言える
顔立ちだったのも原因の一つだったのかもしれない
いじめと言っても無視や陰口程度のもので嫁ちゃんも
さして意に介さないって態度だったけどその内容が俺にとっては許せなかった
「嫁ちゃんは実は整形なんだってwww」
クラスでそこそこ発言力のある女の子が俺に耳打ちしてきた時に
俺は自分の心の中をエグられたような気分になって教室で大立回り
「整形の何が悪い?」
「じゃあお前は俺みたいに唇が割れて生まれても治すなってのか?」
「よく見ろ。俺の鼻の下から唇にかけてよく見りゃ傷跡があるだろ」
「これもまぎれもなく整形だよ馬鹿野郎」
「整形術で治さなきゃ世間じゃ人扱いされない病気で生まれたんだ治して何が悪い」
「俺だって普通に生まれたかった。そうすりゃカーチャンも俺をきっと捨てなかった」
等と耳打ちした女の子の胸倉つかんで騒ぎ立て、最後は泣きながら訴えてたらしい
らしいってのは俺は何言ったかはっきり覚えてないから
あとからクラスの友人や嫁ちゃんに聞いた
で、騒ぎを聞きつけて担任と生活指導の先生が来て引き剥がされて
生徒指導室で聞き取り調査された
その後は俺はお咎めなし、俺に耳打ちした女の子も嫁ちゃんとなぜか俺にも謝罪
俺も筋違いな事を言って責めたことを女の子に謝罪して終わり
その後、担任によるHRでのフォローとかで丸く収まり
結果嫁ちゃんへの陰口などは無くなった
後日嫁ちゃんから聞いた話で、実は嫁ちゃんも口唇裂だった
嫁ちゃんは不完全型で、唇が少し裂けた状態だったらしい
そのため傷口も俺ほど大きくなく、また俺よりも目立たないんだけど
小さいころを知ってる近所の人とかの噂話的なのを聞いた誰かが
整形話にして広めようとしたのかもって嫁ちゃんは言ってた
「別に陰口くらい気にしてないのに、でも嬉しかった」
って言われてようやく俺も恥ずかしくなって
でも嫁ちゃんと話せて嬉しかったのを覚えてる
俺的に大変だったのはこの後の事で
泣きながら自分の境遇を暴露しちゃったもんだから
しばらくは腫物扱いというか、アイツの顔の話は触れるな的な空気で
それまでヤ○ザ顔とか言ってふざけてたのに急によそよそしくなったりで困った
その時のフォローや、何かしらで二人一組になったりする際は
嫁ちゃんが真っ先に俺と組んでくれて、結果急接近してった
教室での騒動から数日後の夜に嫁ちゃんとそのご両親がウチに来た
俺が嫁ちゃんの為に大立回りした事を上手く良い様に嫁ちゃんがご両親に話した結果
そりゃ一言御礼をとウチに来て
その際に困った事があったらウチの娘を使ってくださいとか言われちゃって
俺父さんの息子さんなら間違いないですわーとかなんとか親同士意気投合しちゃって
あっという間に親公認の仲みたいになったのも良かったのかもしれない
2学期の中間テストの頃にはクラス公認のカップル扱いになってて
先生にも俺か嫁ちゃんに言っときゃ伝わる的な扱いされてた
その後は順調に付き合ってたけど高校受験の際に
第一志望に俺が不合格して一緒の高校に行けなくなって
仕方なく俺は男子校、嫁ちゃんは第一志望に通い
卒業後は俺は専門学校行って国家資格習得
嫁ちゃんは6年制の大学行って国家資格習得
嫁ちゃんの卒業を待ってプロポーズして翌年結婚
今は義実家の仕事場で一緒に仕事してる
なんで書いたかっていうと
先日嫁ちゃんの誕生日に前から欲しがってた某バンドのBDをプレゼントしたんだけど
その中にまさに累ヶ淵を題材にした楽曲が入ってて
二人で当時を思い出してキャッキャウフフしたからその記念に
GJ!中学生で男前かよ。幸せにな!
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