保育園の時に「大きくなったらお嫁さんになる」
小学校の時、先に授業が終ってた嫁は、いつも俺の事を待っていた。
両親や近所の人からは、冷やかされたり誉められたり。
が、先に中学に進学した俺は、ほとんど会う事も無くなった。
・
・
・
やがて、大学に進学して郷里を離れていた俺が夏休みで帰省した時、
16つづき
昼飯を食べる為に外に出て、しばらく歩いていると、自転車に乗った彼女にあった。
「やあ」と軽く手を挙げると、彼女はにっこり笑って自転車を止めた。
「久し振りですね。元気でしたか?」
「うん、まあまあかな。来年受験だよね。」
「そうです。今も補習の帰りなんです。」
「そっか、頑張れよ。」
・
・
・
「ところで、いつまで居るんですか?」
「うん、明後日に帰ろうと思って」
「お願いがあるんですけど、良いですか?」
「何?」
16つづき
「メルアド教えてくれませんか?…学校の事とか相談したいし…」
顔を伏せて、そう言った彼女に俺は、少し意地悪したくなりこう返した。
「でも、彼氏に怒られるんじゃない?」
すると、顔を紅潮させ、興奮気味に
「彼氏なんか居ません!受験生だし…」
「ごめん、冗談だよ。なんか書くものある?」
彼女は、カバンの中からボールペンとメモを取り出した。
彼女に似合わないような時代物のボールペンだ。
「あれ?このボールペン、ひょっとして」
「えへへ、まだ使ってるんです」
そう、そのボールペンは俺が中学の入学祝いに叔父がくれた物を
彼女が欲しがったからプレゼントしたものだ。
30つづき
「物持ち良いな。偉いぞ」と俺は彼女の頭を撫でた。
「あっ」彼女は一瞬驚いた表情を見せた後、
「7年ぶりだ。そうやって撫でて貰うの」と、はにかんだ。
「ほい、書いたぞ。必ずメールくれよな」
「うん、返事はちゃんと下さいね」
・
・
・
帰省先から戻った俺は、
一番にPCの電源を入れ、メールをチェックした
32つづき
期待に反してメーラーに表示されたのは、
「新着メッセージなし」だった。
「まあでも、今日帰るって言ったからまだ着てないだけかも」
そう自分に言い聞かせてPCの電源を落とし眠りについた。
翌朝、起きてすぐにメーラーを起動させたが…
激しく落ち込んだが、グズグズはしてられない。
学校はまだ1ヶ月あるが、バイトがあるのだ。
・
・
・
バイトから帰って来て電源を入れる。
やはり、新着メールは無い。
34つづき
「社交辞令か…」ひとり呟く。
ベッドに寝転ぶと、久し振りの再開とか子供の頃の事とかが思い浮かんだ。
「可愛くなってたな。それにしっかりしてた」
子供の頃、俺にいつも付いてきてた事を思い出した。
溜息を付きながら寝返りをうつと、枕元の留守電のランプが点滅している事に気が付いた。
「えっと、○○ですけど、おばさんに番号聞きました。
教えて貰ったアドレス、返って来ちゃうので…。一度連絡下さい。電話番号は…」
すぐに電話しようと思ったが、時間は12時近くであったので、日を改める事にした。
余談ながら母から「○○ちゃんから番号聞かれたから教えた。ニヤニヤ」との留守電もあった。
37のつづき
翌日、バイトに行く前に電話をした。
いつもの事だが、女の子の実家に電話するのは、緊張する。
数回の呼び出し音の後、「はい」
電話に出たのは、彼女の母親だった。
「ご無沙汰しております」
「あらあら、久し振りね」
・
・
・
10分程、近況報告や何やら話した後に彼女が現在不在である事の旨を言われた。
とりあえず、FAX兼用電話である事を確認出来たので、
FAX流すから渡して下さい、と言って電話を切った。
そして、バイト先からアドレスを大きく書いた紙をFAXした。
その日、バイトが終ってwktkしながらPCを起動。
95だったので中々起動しない。
(当時のスペック、130MHz、メモリ16MB)w
起動の瞬間にメーラーを立ち上げる。
ダイヤルアップ接続にイライラ。
そして、1件の受信を確認。
彼女からだった。
「こんにちは」そんなありふれたタイトル。
内容は、学校の情報処理でPCを覚えた、
久し振りに会えて嬉しかった、
メールが送れなくてパニくった、
そんな有り触れた内容だった。
何だか、嬉しかった。
1時間ほど書いたり消したりを繰り返し、
何とか出来上がった当たり障り無いメールを送信。
送った後も何だか落ち着かなかった。
そして彼女からの返信。
大学受験に対する不安や大学生活に向けての内容が主だった。
後は、他愛無い日常について。
・
・
・
そんなやり取りを週2回ほど繰り返してた12月のある日、
「男子から告られた」と言う内容のメールが届いた。
相手は、推薦で進学を決めていた運動部の主将で、
「自分は今から追い込みかけなきゃ駄目なので」と断ったとのこと。
でも、「まんざらでも無かった」とのこと。
軽い嫉妬が湧き上がった俺は、今までの彼女のこれまでの男性遍歴が気になった。
しかし、どう書けば良いかわからなくて、しばらく返信しなかった。
65つづき
そして返信をしないまま2週間が過ぎた頃、彼女から次のメールが入った。
「忙しいのですか?」と言うタイトルで、
内容は、この間のメールの内容で、
受験生なのに浮かれ過ぎた事の反省と寂しいので返信が欲しい、との事だった。
気にするな、受験生でも恋とかも良いんじゃ無い?
それを目標に頑張ってる人も居るだろうし、忙しくて返信出来なかったごめん
聞きたい事は、他にあったが、あえてそんな返信をした。
次の日、「良かった」と言うタイトルにハートマークが一杯付いて送られてきた。
怒らせたのかと思って心配した事、そして今まで彼氏居ない歴=年齢である事、
だから付き合うこととかが、わからない、とかが書き連ねてあった。
そして、最後に「P.S お正月は帰られるんですか?帰るんなら会えませんか?」
バイトのシフトの都合とかで、本来は帰省の予定は無かったが、帰省する事にした。
66つづき
予定の無かった帰省に家族は、戸惑っていたが、
母だけは何となく見当が付いていたらしく軽く釘を刺された。
そして、子供の頃によく遊んだ神社に初詣。
その後、お約束のようなイベントを経て、
彼女は、同じ大学では無いが、無事合格し、上京する事に。
上京時の引越しの手伝いとかもお約束。
家電を購入しに行き、テレビの配線やら冷蔵庫の設置やらを行う。
そして、俺のバイト先で彼女もバイトする事に。
バイト先では、彼氏彼女と思われてたが、兄妹と言う感じの関係がしばらく続く。
・
・
・
そして、2年前の10月に結婚した。
FIN
最近のコメント