521: 名無しさん@お腹いっぱい。 10/30(木) 13:29:29.08 .net
今書き込んだら割り込みになりますか?
他の方も名前特に変えてないようですしそのまま書き込みます
小学生編
引越し先のご近所に住んでた同い年の女の子が嫁だった
嫁は風邪をひきやすくてよく熱をだしてた
それもあって内向的で読書をよくする女の子で、スポーツ出来る奴=モテる的な思考の小学生には外で遊ばず教室に一人でいる嫁は自然と周りから浮いていた
小学生なんて読書嫌いばかりだから、教室で分厚い三銃士の本を読んてる嫁の楽しみを理解する人はいなかった
俺も転校でクラスに馴染めなかったから教室の済で息を潜めていたんだけど、嫁は本を貶されると皆が居なくなったあとひっそり泣いていた
翌日晴らした目をして学校に来ても、本に感動してと誤魔化していた
本好きな嫁のために何かをしたかったのだと思う
気味悪がられたのか捨てられたのか、一度もその栞をつかっている場面は見なかったが
中学生編
嫁とは中学の三年間もクラスが同じで俺の嫁観察は続いた
年があがるにつれて嫁はより穏やかになり、そして影で泣くのが上手くなっていった
一度嫁がとてつもなく熱中していた事を教師が茶化してクラスメイトとバカにしたことがあった
冗談めかした弄りなんだけど、机の下でハンカチを固く握りしめている嫁は、きっと心の中で泣いていたんだろう
けれどけして表情には出さずに静かに悲しんでいた嫁を見た時、物凄く守ってやりたいという気持ちが生まれた
俺は嫁に話しかけるようになり、読書好きな母の蔵書を嫁にかすようになった
俺が一枚噛んだことと、借り物の本、人の親の持ち物というのもあって、あからさまな嫁いじりはなくなった
放課後俺の部活が終わっても嫁が教室で俺の貸したハリーポッターを読んでいたことがあった
そんな時間まで残ってたことも驚いたが、集中してる嫁がすごく綺麗に見えた
そこだけ切り取って違う空間があるように、本を読む嫁の周りに不思議な空気が流れていた
最終下校の放送が流れて嫁が初めて時間に気づいたようで、驚いて時計を仰ぎ見た
そして俺が見ていたのに気付いて更に驚いて恥ずかしそうにしていた
俺はもっと嫁を見ていたかったのに残念だとさえ思えた
高校編
高校も嫁とは同じクラスになり、本を貸す行為は続いていた
ある日もう少しで読み終わるという本を返したいとのことだったので、俺の家で読んで続きを借りていけばいいと提案した
俺は相変わらず本を読む嫁を眺めているのが好きで、俺の部屋でベットにもたれかかって本を読む嫁を壁際にもたれて眺めていた
「どうしてそんなに見つめてくるの?」
「本を読んでる嫁が好きだから」
「見ていて面白い?」
「うん」
そんな会話だけを交わして、嫁はまた本の続きに戻った
読み終わった時には周りは暗くて、俺は嫁を送っていくことにした
帰り道歩きながら嫁は満月を見ながら夏目漱石のことを話してくれた
彼女の口から語られる長靴をはいた猫は、本で読んだ時とまた別の魅力があって、俺は初めて嫁が好きだと気づいた
ある日嫁が一週間学校を休んだ
本を貸したままだし続きもあったので気になって見舞いに行くことにした
嫁は高熱が続いて危ない状態だと言われた
昔から度々高熱が続くことはあったが、今回は特に酷いらしかった
本の事を伝えると、今は読める状態ではないから一旦お返しすると言われて、貸していたルーンの子どもたちを母親が持ってきてくれた
それを受け取ってパラパラと開いていると、中から見覚えのあるものが出てきた
俺が小学生の頃に作った栞だった
裏側に小さい押し花が引っつけられていて、綺麗にラミネートされていた
それを見た瞬間、俺の中で何かの感情の泡が弾けて涙がボロボロと流れてきた
嬉しさと悲しさの混じった涙は生まれてこの方その時だけで、言葉に上手くできないあの感情が襲ってきた経験は他にない
嫁は更に一週間休んで学校に来たが、声が出なくなっていた
右耳も音が聞こえないようだった
戻るのかと聞いたら、困ったようにはにかんだ
声はかなり時間がかかってなんとか戻ったけど、結局耳は戻らなかった
左耳にも聴力障害が残るだろうと言われている
これは年々悪くなるので将来大人になってから聞こえなくなる可能性が高いとのことだった
それから嫁は俺から本を借りるのをやめて、手話の本を手にするようになった
医者のすすめで、まだ聞こえているうちから手話を覚えておいたほうが本人も辛くないだろうとの事だった
大学編
大学生になると、嫁は普通の会話でよく聞き漏らしをするようになった
聞こえる方の耳をこちらに傾ける癖ができて、嫌でも難聴の進行を痛感させられた
音をだんだんと失っていく、それが自覚できる
俺はそれがとても恐ろしく感じた
耳が聞こえない為に嫁が事故にあう姿を夢でみるようになり、大学で顔を会わせて夢であったことを安心する日々が続いた
俺は気を紛らわせるように図書館に通った
大学生活も終わりに近づいた頃、嫁の1月の誕生日を迎えた
俺は返せないままだった栞を持って、嫁に会いに行った
玄関出迎えてくれた嫁に「誕生日おめでとう」というと、恥ずかしそうにに「ありがとう」と笑った
俺が栞を差し出し、返せなかった事を謝ると嫁は黙ったまま栞を見つめた
そしてまた「ありがとう」と言ってはにかんだ
俺は図書館に通った成果を存分に発揮した
左手を握り、右手のひらをその上で2回まわす
「愛しています」
嫁はボロボロと涙をながし両手の人差し指と中指を2回合わせた
「私もです」
二人して玄関でボロボロと泣きあった
それから大学も卒業して無事社会人としての基盤が整った頃、俺は嫁にプロポーズをした
6月に結婚式を上げた頃には、嫁の耳は殆ど聞こえていなかった
教会で二人だけの質素な結婚式を上げた時、かすかに聞こえる耳で愛の誓いをしてくれた
お幸せに
人差し指と親指って書きたかったのに人差し指と中指と書いてました
当時を思い出すと涙が出てきてダメですね
途中わかりにくい文章がなければよいのですが
>高校も嫁とは同じクラスになり
さらっと書いてるが本当の事を言えよ追いかけて入ったんだろ?中高一貫か?
まあいい幸せにな
>>538
俺と嫁の家県境だったせいで無理なく通える公立高校が二箇所しかなかったんです
片方の高校は農業職が強く、地元の農家の跡取りの子等が通っていました
もう片方は有名な進学校でしたので、俺達は自然とそこが第一志望になった形です
高校のクラスが同じになったのは、嫁の耳のことがあったので作為的だったと聞いています
俺達の中学からその学校に行った人は殆どいませんでしたから
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