小学校のとき近所のそろばん教室に通っていた。
ある日、教室が終わり外に出るとどしゃぶりの雨が降っていた。
その時、よく同じ時間帯に習いに来ている年上の男の子が傘をかしてくれた。
彼がなぜ傘をかしてくれたのかはわからない。
僕はカッパがあると言い、カッパを来て帰って行った。
単純な私は、そのときから彼の事が少し気になっていた。
まだ小学生だったので記憶はおぼろげなところもあるけれど
教室の出席簿で、彼の名前は覚えていた。
中学生ぐらいの時だったと思う。
机を掃除していたら、小学校の時にもらった木箱が出てきた。
私が通っていた小学校では、入学してきた1年生のために6年生が
彫刻刀で彫った木箱をプレゼントする習慣があった。
木箱をどんなふうにもらったかは覚えていないけど、多分ランダムで配られる。
ただ、裏を見ておどろいた。
「6年○組 △△△」
木箱の裏にあの時の「彼」の名前が刻まれていた。
彼の名はすこし変わっていたし、これはあのひとが作っていたものなのでは、と思った。
その頃には、もう彼を教室で見かけることは全くなかったので、きっともう辞めていたと思う。
彼とはその後、私が19歳の時に隣県で再会した。
部署は違ったけど同じ会社だった。
彼は私の事は覚えていなかったけど、教室が同じだったことを話すとびっくりしていた。
あと誰かは覚えてないけど傘をかしたことはあると言っていた。
私はどちらかというと受け身で会社の人との雑談も苦手なのに、彼の前では自分が出せた。
趣味も共通するところがあったし、何より話していて楽しかった。
生まれ育った場所も近かったというのもあり、よく周辺に一緒に出掛けた。
その後彼の転勤が決まったのを境に、なかなか会えず。
でも私から連絡を取るようになって、付き合うようになった。
たまにしか会えなかったけどなぜか不安になることもなくて、ケンカもしなかった。
私が越してから約2年で結婚。
付き合ってた頃はわりとクールな人だと思ってたのに一緒に暮らすと相当甘えん坊なことがわかってきた。
旦那と再会した時、この人と結婚するとかそういうのを感じたわけではなかったのだけど
木箱に刻まれていた名前を思い出すたびに
この人とは会うことが決まっていたのかな、とは思う。
旦那には、木箱の事をだいぶあとになってから
話したことがありますが「そんなの作ったっけ」と全く記憶にないようです…
赤い糸ってやっぱりあるんだね。
いいなあ。うらやましい。
私は気づいた時は既に遅かった
末永くお幸せに