物づくり系の仕事だったんだけど、材料費が安いもんだからわざわざ営業しなくてもそれなりに儲かってたんだよな当時は。
店長は経理面でもどんぶり勘定でテキトーな感じだった。
そんな俺カッコイイと言って憚らなかったし。
振込手数料惜しさに給料は手渡し。
雇用保険なんかあるわけない。
だから人を雇っても当然続かない。
旦那の横暴に耐えられなくて最低限の荷物だけ持って逃げてやっと離婚できたらしかった。
絶対落とすだろうなって思ってたら採用したんだよ。
三時間勤務のパートとして。
元々器用だったようで仕事もすぐに覚えてくれた。
色の細かい打ち合わせは女性と話した方が間違いないからって、四ヶ月たつ頃には指名までされてた。
俺は店長に聞いたんだよ。
彼女の素質を見抜いて採用したのかって。
そしたら店長が言うんだよ。
【母子家庭だから簡単に仕事はやめない
ちょっとくらい不満があったって文句なんか言えない言ってこない
だから雇ったんだ】
ってさ。
なんか俺ゾッとしたの覚えてる。
子供が熱出したとかでたまに休んだりもしたけど、次の日には本当に申し訳なさそうに謝るA子さんは大変そうだった。
でも前の日にやるはずだった仕事もちゃんと片付けるからチャラだろ、少なくとも店長はそうだしって思ってたら
【(突然休まれたら)はっきり言って雇いにくいよ?】なんて言い返す店長を見てなぜか俺がだんだん不信感を募らせてった。
ある時俺が出勤したらA子さんと店長が話してた。
せめて最低時給は保証してください御願いしますって。
食費にも満たないんですと。
ダメだと思いつつも聞き耳立てたら、なんとA子さんは日給千円しか払ってもらってなかった。
時給じゃない、日給だ。
採用された最初の月は800円だったらしい。
こっちも時給じゃなくて日給な。
忙しい時は5時間以上勤務してる日だってあった。
俺言葉を失ったよ。さすがに法で定められてることくらいは守ってると思ってたからさ。
【子供が保育園に行くために証明?書いてあげたよね。
養育費貰ってるんでしょ?(子供二人で月四万って言ってた)
時給が欲しいならまずそこにいくまで頑張らないとダメじゃない?(評価はどのタイミングで?店長サボリ常習なのにいつすんの?)】
とかも言ってた。
なんのことはよくわからんかったけど、脅してたのは間違いなかった。
俺は店長がA子さんに次の脅しをかける前におはようございまーすって入ってった。
なんかもう店長がキモく思えた。
最低ラインも守らない奴が養育費貰ってるんだからいいだろって言ってるんだから。
他人の家庭に養育費いくら貰ってるとか余計なお世話すぎんだろとか。
A子さんは俺に給料のことで何も言わないし俺も何も聞かなかった。(ちなみに俺は歩合だった)
それから半年ほど過ぎた頃だったかな。
A子さんが退職すると言った。
聞いたら法律系の国家試験に合格して、事務所に採用が決まったんだ、と。
この頃にはA子さんにすげー頼るようになってた店長がまさかの引き止めに入ったよ。
不満なら他で働けばー?とまで言ってたのに。
するとA子さんニッコリして
【あの時の状況で雇っていただいたことには本当に感謝しています
でも日給千円でずっと働くのは無理です
お客様に迷惑をかけないことだけはちゃんとしてきたつもりです
だからお店の利益になりそうなことも表に出さず、お客様と私だけで共有してました
あの時の話し合いは無駄でしたね
おかげで開き直りましたよ
突然お休みを貰うときは必要以上に申し訳ないと思わずに済みました】
店長ぽかーんとしちゃってた。
A子さんが辞めたあとの店は目に見えて売り上げが落ちた。
ゼロに近かったクレームも急増した。
クレームは全部、今までサボってた店長が請け負ったオーダー品に関してだった。
どう対処したのかは今も知らない。
俺もA子さんが辞めてしばらくたった時に本業でなんとかなるようになったので店を辞めた。
最近店の前を通ったら貸店舗になってた。
潰れたんだろうな。
A子さんには今でも仕事の関係で世話になっている。
俺とA子さんが結婚したというオチはないw
なんてスカッとする話だ!
A子さんが幸せになって良かった
店長ざまぁw
虐げられ続けた人はやがて強くなって反撃だって出来るって知らなかったんだろうな
それに人材の本来の使い方を知らない人は人を雇う立場に立つべきじゃない
しかし労働基準法無視した経営者って今も昔もいるんだよなー
苦情言ったら「あんたには、旦那の給料入るから」との返事。
で当然辞めた
その後「給料払うから戻って欲しい」
自分が担当したのは雑誌のスペースの3分の1だったから、スポッと抜けた途端、雑誌が発行できなくなったんだった
結局、休刊だか廃刊だかになったもよう
いい雑誌だったが、申し訳無さは感じなかった
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